第42回 東京都 Aビル賃貸管理会社 ~ビル管理からオーナー様の資産管理へ SA社への不動産コンサルティング事業推進支援~
福田 郁雄 株式会社福田財産コンサル 代表取締役
賃貸管理会社やビル管理会社はオーナー様に近い所にいながら、オーナー様の財産の相談を受けることが少ないようです。せっかく資産家に近いポジションにいるのに、随分もったいないことをしているという認識はお持ちです。
今回はSA社が本格的に始めようとしている、ビルオーナー様向けのコンサルティング事業推進の支援を行った事例をご紹介します。
-依頼者の状況-
依頼者は…
Aビル賃貸管理会社は現在、東京都心部に7拠点の営業所を擁し、総勢60名におよぶ社員がいる東証一部上場企業です。東京都心部に集中し、地域に根ざした営業活動で、約1600名のビルオーナー様と多数のテナントに、年間700件に及ぶ賃貸仲介と日常のビル管理運営をしています。
明確なミッションを持った社長の経営の元、徐々に規模を拡大し、物件の管理を行なうプロパティ・マネジメント事業部の他、リプランニング事業部、建設ソリューション室、リーシングマネジメント事業部、建設部、流通事業部と幅広い分野を網羅する総合不動産会社となりました。
社長は、ビル管理だけでなく、ビルオーナー様の所有する不動産の悩み・相談事に総合的に応えられるようなコンサルティング業務を強化したいと常々考えていました。
そこで、日頃から仕事上でお付き合いがあり、社長の経営哲学に共感する私どもに相談がありました。一年間の顧問契約を結び、不動産コンサルティング事業推進支援を行ないました。
依頼者の要望は…
新たに不動産コンサルティング業務を事業領域に加えたい。オーナー様に対し、ビル管理だけではなく、オーナー様の所有する財産全体のコンサルティングを通し、売買や建替え、組み換え、などの提案が自社でできるようになりたい。
プロパティ・マネジメント部門やリーシング部門では、毎日のようにビルオーナー様と接する機会があるのに、そのような情報が入ってこなくて機会損失をしている。オーナー様の要望をうまく汲み取り、多岐にわたる自社部門を活用してオーナー様のお役立ちをしたい。
実際の展開は…
1.アセット・マネジメントとプロパティ・マネジメント
まずはアセット・マネジメントとプロパティ・マネジメントの違いを説明します。プロパティ・マネジメントは、入居者の斡旋、ビル管理などの個別ビルの運営サポートです。それに対し、アセット・マネジメントは、資産家が持っている資産全体を総合的に運用します。簡単に言うと、プロパティ・マネジメントは物件管理を、アセット・マネジメントはオーナー様の財産管理を行なうと言えるでしょう。
そもそも何故プロパティ・マネジメント業務が生まれたのでしょうか?従来はビルオーナー自らが、テナントづけの手配、法定点検の手配、修繕の手配など全てを行うスタイルのビル経営が主流でした。そこに、所有者=経営者という考え方から、ビル管理そのものは専門家に任せて、所有と経営を切り離して、経営はプロに任せ、オーナーとして果実の収入(インカム)を得るという考え方が始まりました。所有と経営の分離です。
それによってオーナーはそれぞれの自分の本業に専念できます。もしくは、趣味の時間を充実させることができます。さらに、賢いオーナーは所有する資産を最大限有効に運用するための勉強の時間に費やします。
細かいビル管理業務は外注し、その時間をもっと生産性の高い時間や生活を充実させるための時間に使うのです。
その受け皿として生まれたのが、プロパティ・マネジメント会社です。A社もその一つで、比較的新しい業態です。この業態の会社の歴史はまだ浅く10~15年程度ではないでしょうか。
A社は、オーナー様のビル経営をトータルにサポートして、プロパティ・マネジメント部門は順調に伸びています。
一方ビルオーナー様の財産管理を行うべく、アセット・マネジメント部門は手つかずでした。
アセット・マネジメントが出来るようになれば、不動産の売買や建築を通して得られる仲介料や企画料の他、不動産コンサル報酬の機会も生まれてきます。
これらは、日々の地道な管理やリーシングでの報酬に比べるとはるかに大きなビジネスとなります。プロパティ・マネジメントで日々オーナーさんと接する機会があるので、宝の山が目の前にある状況です。
アセット・マネジメントは大切なビルオーナー様の財産について助言する立場になるので、相当高いスキルが必要です。不動産、建築、税務、法務、相続、経営、金融など幅広い知識と経験が求められます。また、感情を持つ人間を相手にするので、正しい心や人間性も求められます。
2.課題点とコンサルティング機能強化策の提案
A社の社長ともお会いして、お互いの経営姿勢に共感を覚え、当社で何かお役立ち出来る事があればということで、顧問契約を結び、一年間お手伝いさせていただくことになりました。A社の窓口となって、当社とのやり取りを担当してくださったのはABさんです。
SA社の課題は新興企業に良く見られることですが、会社も社員も若く、人財が育っていないということです。
日々の日常業務を完全に履行することだけでも大変なのに、新規事業を行うとすれば、相当の負荷が社員にかかります。残業や休日出勤をして、何とか早く一人前になろうという段階の社員が大半です。
中途半端に新規業務を行うのであれば、新規業務がモノにならないだけでなく、既存の日常業務も中途半端になる恐れがあります。
ましてや不動産コンサルティング業務やアセット・マネジメント業務は求められるスキルが大変高く、付け焼刃でできる業務ではありません。
成果を出せるまでには、ある程度の時間を覚悟しなければなりません。
そこで、私はSA社社長に次の3つのお願いをしました。
① 専門部署を作ること
② そこにはエースを登用すること
③ 続けること
まずは下記をご提案しました。
ビルオーナーへのコンサルティング機能の強化策について
目的
社内でビルオーナーへのアセット・マネジメントができるようになることにより、売買・仲介・斡旋などの業務の受注機会を増やす。
対策
相続の問題やPM時の問題、債務の問題が発生した時に、相談が来る環境を整備しておく。
顧問契約内容(案)
① 社内勉強会講師
② セミナー講師
③ 各種相談業務
④ ビルオーナーへの同行同席
⑤ 各種助言
・顧客管理・顧客育成計画
・各種専門家のご紹介
・社内紹介・評価システム
・その他必要に応じ
上記顧問契約内容の通り、社内勉強会を月1回5カ月にわたって行なうことにしました。「不動産相続コンサルティング勉強会」です。毎月第3土曜日の10:00~12:00で、参加は有志です。
目的は「不動産投資と相続に強くなり、資産家から相談される人になる」ことです。勉強会の進め方は、前半50分は基礎知識を、後半50分は事例研究、その後、質疑応答 20分です。
社員の皆さんが若く、ビルオーナー様から相談を受けたり、コンサルティング業務を行ったりする経験がありませんでした。そこで、まずはコンサルティングのイメージを持ってもらうことが大切と思い、事例を中心にお話しすることにしました。
事例だけではいきなり応用となってしまうので、原理原則を学ぶ時間を前段に取りました。
参加は自由としたのは、自主性を尊重したからです。何事もやらされるのでは中々上手くいきません。会社からやらされているのではなく、自分で次の上のステップを目指すんだという意識が重要で、そしてそれが身につきやすいのです。
会社が休日である土曜日の休日に自主的に勉強する姿勢は素晴らしいです。SA社の日頃からの仕事への動機づけの高さを垣間見ることができました。
限られた時間の中で、最大限の成果を出すにはどのようにしたら良いかと思い悩みました。あまりにも初心者のレベルに合わせてもいけません。それではわざわざ外部の専門家を使う必要がありません。初心者レベルであれば社内講師で十分です。
そこで、より実践的な内容にし、まずはトップランナーの方だけにでも理解してもらえるようなレベルのものにすることにしました。
途中で着いて来られなくなる人も出てくるかも知れませんが、そこは割り切ってトップランナーの人達に焦点を充てることにしました。
ビルオーナー様にコンサルティングができ、アセット・マネジメント事業が社内に定着するまでのステップを次のように考えてみました。
※図表1 アセット・マネジメント事業が定着するまでのステップ
① 社員が重要性を認識し興味を持つレベル
② トップランナーが理解できるレベル
③ トップランナーに実績が出来るレヘレル
④ 実績が蓄積され、組織に水平展開されるレベル
⑤ トップランナーが教えられるレベル
⑥ 社内に定着
まずは社員が必要性を心の底から認識することです。「オーナー様の相談に乗れて、アセット・マネジメントが出来ればいいなあ~」程度の希望では何も変わりません。
そのために、どうするんだという具体的行動に移っていなければなりません。
全ての社員にそのことを期待するのは無理です。まずはトップランナーの人達が最初に理解し、そして実績を出し、身近な人が出来ている姿を見てそれに続く人達も盛り上がっていくというステップです。
3.勉強会の骨子
(第1回勉強会)テーマ:不動産コンサルティングとはどういうことなのか
第1回勉強会のでは、基礎知識では資産家(ビルオーナー様)の考えていることを、事例研究を通して大きな視点から自分の仕事を見直すことを学んでいただきました。
組織で仕事をしていると、仕事内容が専門化し全体の中での自分の行なっている仕事の意義を見失ってしまうこともあります。当社がコンサルをしたお客様の事例で、A社の物件を購入して組み替えに成功した事例を取り上げました。
自分のやっている仕事と不動産コンサルティングとの繋がりを意識してもらいました。
(第二回勉強会)テーマ: あなたができる顧客への 「価値」の提供は?
「考える」ということを意識づけしてもらうために、数々の簡単そうに見えるのですが、本質的な質問をぶつけてみました。質問は下記のとおりです。
・あなたができる顧客への
・「価値」の提供は何ですか?
「私は○○を売っています」
・将来の資産設計は考えていますか?
・どんな状態でいたいですか?
・デフレは良い?
・デフレは悪い?
・リスクって何?
・キャピタル・ゲインの出し方知っていますか?
・不動産投資で失敗する理由は?
・投資物件購入の決め手は何か知っていますか?
・借金は有利ですか?
・あなたの10年後はどんな状態になっていますか?
・不動産は個人で所有すべきか?それとも法人で所有すべきか?
・そもそもお金って何?
・お金の正しい使い方ってありますか?
・ワクワクドキドキ感のある事って?
これらの質問には正解はありません。自分が考えたものが答えです。また、若手社員が今ははっきりと答えられなくても構いません。答えられなかった質問に対し問題意識を持つことによって、今後答えを探したり、考えたりする習慣ができるからです。
後半は「感じる」という教育です。
教育教材で使われている「てんびんの詩」のDVDを見てもらいました。
DVDを見た方はほとんど感動し涙を流されます。特に営業や経営で苦労された方は、感情移入します。 以下にそのあらすじをご紹介します。
近江商人の家に生まれた主人公・近藤大作が小学校を卒業するところから始まりはじまります。その日、大作は父親から祝いの言葉と共に、包を贈られた。中に入っていたのは鍋蓋。大作には意味がわかりません。変哲もない鍋蓋が大作の将来を決めることになるのですが。父親は大作にそれを売ってこいという。売れなければ家業を継がせないと突き放す。まずは安易に店に出入りする者の家を回るが、親の威光を嵩にきた押し売りのような商いがうまくゆくはずはあり得ません。さりとて、見知らぬ家を訪ねても、けんもほろろ、ろくに口さえきいてもらえません。親を怨み、買わない人々をにくみます。父が茶断ちをし、母が心で泣き、見守る周囲の人々が彼以上につらい思いをしていることに、気づいていません。時にはもみ手の卑屈な演技をし、時には乞食娘をまねて、農家の老夫婦を泣き落としにかかったりもするが、所詮うそはすぐばれ反感を買うだけでした。いつしか大作の目には涙が。
そんなある日、農家の井戸の洗場に浮んでいる鍋をぼんやりと見つめながら、大作は疲れ切った頭で考える。「鍋蓋が無うなったら困るやろな。困ったら買うてくれるかもしれん。」しかし、その次の瞬間“この鍋蓋も誰かが自分のように難儀して売った鍋蓋かもしれん”と思う。大作はただ無心に鍋蓋を洗いはじめる…。近づく足音にも気づかない大作。女が問う。「何で、うちの鍋、洗ろうたりしてる。お前どこのもん。」大作、思わずその場に手をついて「かんにんして下さい。わし悪い奴です・・・なんにも売れんかったんやないんです。モノ売る気持ちもでけてなかったんです。そんな三ヵ月やったんです。」彼の顔をふいてくれる女。それは、母親が実の子にする愛の行為そのものだった。そして、大作が我が子と同じ十三歳と知った女は、彼の鍋蓋を売ってくれという。売れたのである。はじめて、売れたのである。〝売ればわかる″といった父親の言葉の意味を大作は知る。売る者と買うものの心が通わなければ、モノは売れないということを…。人の道にはずれて、商いはないということを…。
感想は様々でした。「お役立ちの心が大切だ」「気持ちを通じ合わせることだ」「母親の子を思う気持ちに感動した」「正しい心を持つことだ」
正解はありません。皆さんの心の中で感じることが大切なことです。とコメントをまとめました。
(第3回勉強会)テーマ: 相続税の基礎知識
具体的土地評価の計算例、相続税額の計算例などを勉強していただきました。
事例研究では、相続税の基礎知識を踏まえて、大田区Yさん「新橋ビルの増築と自宅の有効活用」を研究しました。
事例を通じてのディスカッションです。自ら積極的に質疑を展開することを期待しました。
ところが、「基本的な事が分からない。」「何を質問して良いか分からない。」という反応であり、現状と求められるレベルのギャップの大きさを感じました。
(第4回、第5回勉強会)テーマ: 相続対策の実際
「事例 中央区Eさん自宅の売却と分散投資」、「事例 港区Kさん 老朽ビルの売却とマンション投資」を取り上げました。どちらも、以前フォーラム21で取り上げた事例です。
都心のビルオーナー様が顧客に多いということで、都心のビルオーナー様の事例をピックアップしてみました。
5.公認 不動産コンサルティングマスターの資格取得
当社の窓口であったABさんは、まず自分で公認 不動産コンサルティングマスターの試験を受け、見事に合格しました。
さらに、今年その上級資格である「相続対策専門士」の三日間の講習を受け試験も合格しました。グループ討議ではリーダーを行い、他のメンバーを引っ張っていく立場でした。
SA社のトップランナーとして、機関車の役目を期待される人財です。私はSA社の社長に「本来教育は社内講師が一番良いのですよ。社内の実情に合わせ、身近な人が教えるから効果があるのですよ」とお話ししました。これは、私が大手住宅メーカー勤務の時に人事部の教育部門の仕事をしていたので、確信を持って言えた話です。
その社内講師に白羽の矢が当ったのがABさんです。
ABさんは自ら社内講習を開催しました。3ヶ月にわたる週1回朝40分程度のコンサルティング研究会です。まさに基礎の基礎から学びます。例えば、路線価の見方などの初歩的ところから勉強しました。
また外部講師やまた相続対策専門士の講習を一部担当する芳屋芳也先生をお招きし、ビルオーナーさんとパネルデイスカッション方式で理解を深めるといった工夫もされました。
一年、このような活動を継続して行ないやって、参加者もそれぞれ勉強し続けました。徐々に手ごたえを感じ始めているようです。机上の知識が分かって、ビルオーナー様のモノの見方を意識したことにより、ビルオーナー様とまずは世間話が出来るレベルになったようです。該当物件の話だけではなく、ビルオーナー様と世間話が出来るというのは、とても重要なポイントです。ここから、徐々に相談を受けるレベルに変わっていきます。
6.コンサルティング事業部あるいは専門部署コンサルティング専門部署専門機能室発足
ステップ・バイ・ステップで徐々に有るべき姿に近づいています。とりわけ、この4月から創設された「コンサルティング事業部あるいは専門部署コンサルティング専門部署専門機能室」発足は大きなターニングポイントになると思われます。
「コンサルティング事業部あるいは専門部署コンサルティング専門部署専門機能室」の役割は、現場の担当者からオーナー様の悩みや問題を集め、そこから不動産コンサルティングへ繋げることです。
「コンサルティング事業部あるいは専門部署コンサルティング専門部署専門機能室」が自ら不動産コンサルティングを行います。現場の若い担当者にとっては専門部署に繋ぐだけで良いですし、ビルオーナー様にとっては専門部署のプロフエッショナルな人達が会社をあげてコンサルしてくれるので安心感が生まれます。
部室長はABさんです。この部署に優秀なABさんを入れたのは、社長の社内改革の意識の高さがうかがわれます。その他のメンバーは、外部から3人、社内から兼務2人(証券化業務、売買仲介)が入りました。
この「コンサルティング事業部あるいは専門部署コンサルティング専門部署専門機能室」は設置されてまだ1ヶ月ですが、多くの試みを実践しています。その一つが「社内つぶやき」です。エクセルのオリジナルシートを作成し、全ての支店で共有できるようにしました。このシートは誰でもが記入・閲覧でき、日付、担当者名、支店名、何か気付いたこと簡潔に記入します。これをABさんがは毎日チェックし、コメントを返します。ビルオーナーさんの生の声が、「コンサルティング事業部あるいは専門部署コンサルティング専門部署専門機能室」に集められるシステムです。コメントにABさんは「こんな切り口は?」と提案したり、内容によっては直接そのオーナーさんに会ったりすることもあるそうです。
今までは、このような生の情報が上がってくることが無かったそうです。若い社員が気後れせずに発言できる場を作って、壁の高さを排除しました。以前のフォーラム2012年12月号で述べましたが、「量が質を生む」(発散思考の大切さ)なのでということは、現場の声を数多く吸い上げることは大切です。今フロントマンからの情報の流れが集まってきて、解決するメンバーが集まろうとしています。
また、資産税に詳しい税理士の先生と提携を結び、何か税務のことで分からないことがあったら、電話ですぐに聞けるような体制も作りました。
この部署はひとまず予算を付けていないそうです。(目標数値が無いということ。他の部署も安心してこの部署を利用することができます)「一年やってみろ」との社長の考えです。何か案件が進んだ場合、利益は元の部署に帰属する流れにしてあります。売買部門、仲介部門の数字が取られてしまうと、協力がしにくくなることを考慮したためです。まずは、会社全体の収益機会を増やすことが目的です。
このように、新規事業を軌道に乗せるためには、単に教育をするというのだけではダメです。「組織づくり」「人事制度」まで踏み込む必要があります。社員は人事で社長の本気度を伺おうとします。今回のSA社の対応は、社長のミッションを強く浸透させることになったでしょう。
また、具体的な動きも大切です。情報を末端から吸い上がる仕組みの他、不動産コンサルティングを行っている事を分かり易くビルオーナー様に伝えるツールづくりなど、工夫してやれる事はいくらでもあります。不動産コンサルティングのパンフレットは社長自ら一言一句作られ、色やデザインにも目を配らせています。
私が思うに新興企業や中小企業では社長が自ら細かい所まで指示することが大切です。やはり社長が一番優秀です。任せて育てるということも言われますが、それもケースバイケースです。会社にとって重要な戦略的事項は社長自らが率先垂範する姿勢が大切だということを改めて認識させられました。
7.社員自ら発想し、新しい収益機会とアイディアも
今までも社内のコミュニケーションはきちんと取れた雰囲気が良い会社でした。ただそれは運動会や社内旅行など仕事を含まないコミュニケーションだったかもとはある社員さんのお言葉です。
ちょっと大袈裟な表現ですが、「コンサルティング事業部あるいは専門部署コンサルティング専門部署専門機能室」が会社の組織風土を変革させる目玉になるかも知れません。
実際、社員一人一人が自分の仕事だけではなく、会社の収益機会を皆で考え始めているとのことです。社内は競争関係もありますが、一方協調しながら会社全体の収益機会を増やす事もできるのです。
「コンサルティング事業部あるいは専門部署コンサルティング専門部署専門機能室」の設立によって、部署間をまたいだ新しいアイディアも実現可能です。
例えば、
・「古ビルを買い取りリプランニングして転売するというノウハウ」をビルオーナー様にもセットで提供し、コンサルティングしていく。
・それぞれの部門がビルオーナー様にリフォーム、売買、組み替え、建て替え、維持継続の5つのパターンの企画をプレゼンして、ビルオーナー様に最も良いものを選んでいただく。
などです。実際には手間暇がかかり、限られた人材の中で行うには厳しい話かも知れませんが、社内に確実に利益が留まる方法です。
これら全てを自社で対応できるのはA社の強みです。
8.今後の展望
これらを通してS社は、“真にお客様の視点に立ち、お客様の立場から考える会社に”という立場を明確にしました。またそれを社員全員でシェアしています。S 社にとってのお客様とは“ビルオーナー”様と定義を明確にされたそうです。
リーシングと管理が中心と考えられるプロパティ・マネジメント会社は一般的には仲介手数料を支払ってくれるテナント側にスタンスが向きがちです。
それをSA社のお客様はオーナー様側であると言い切り、オーナー様の方を向いて仕事をすることは、アセット・マネジメント事業を推進する宣言とも言えるでしょう。
その後、都心のビルオーナー様を集めてのおもてなしゴルフとしてコンペを開いたそうです。オーナー様は大変喜んでくれたそうです。ゴルフコンペとは一見、不動産コンサルティングとは別方向に向いているように見えますが、
このような営業的なベタベタなお付き合いから、きっかけが始まり不動産コンサルティングに進んでいくものなのです。
今では、立ち退きがらみの相談を受けたり、管理しているビル以外の資産についての相談や相続があるのでって税理士を紹介してくださいとの話も聞きとるようになり、それがABさんのコンサルティング事業部あるいは専門部署コンサルティング専門部署専門機能室に届けられます。このインタビュー中もBAさんの携帯には若手の社員から電話がかかってきました。お話し通り、若手社員がすぐに電話をかけられる関係性が出来上がっていることが良く伝わってきました。
依頼者の感想
以下に依頼者のABさんと若手社員CBさんの感想を付け加えておきます。依頼者の視点が見えてきます。
以下作成中
ABさん
一般的に不動産を多数ご所有されている資産家、地主の方々は、家業や本業が忙しく、出来ることなら、不動産に纏わる事はすべて、信頼できる誰かに任せてしまいたいというのが本音だと思います。ところが、現在の不動産業界における業態やそれに関わる人材は、これを成就できる状態にあるとは云えません。ず、いまだに資産家の方々が、本業の傍ら、細かいテナント対応や修繕工事の判断に追われています。そしてこの“すべての任せられる人材”への要望は、単なる不動産に関する相談にとどまらず、今後においては将来の相続対策やはもとより、家族の資産全体に関わるアセットマネジメントを、不動産のプロフェッショナルに見て貰いたいという声がお客様の真のニーズへつながっているであるとも考えます。そのような意味において、今回の福田郁雄先生に行っていただいた社内研修は、手段手法の勉強というものではなく、資産家の真のニーズに迫ることで社員の意識変革と新たなビジネスチャンスの創出になったと感謝しております。
今後の目標は、公認 不動産コンサルティングマスターの知識を生かして質の高い事業部を作ることですね。また、公認 不動産コンサルティングマスターを通じて、刺激的な仲間に出会えたことにも感謝です。
当社に関しては、再生事業時代の質の高い事業部つくりたいです。今は
公認 不動産コンサルティングマスターはそれが出来る資格だと思いますね。
当社の中のオーナーのサービスの一環として、公認不動産コンサルタントの知識を生かしていくのはもちろん、これを他の人たちにも伝えたいというビジョンもあります。公認 不動産コンサルティングマスター受講のセミナーを通して、新たな出会いの機会に恵まれました。
それが出来る
外への収益機会
困りごとを一つ一つ
深く入り込む
可能性を感じています。
仕事の連鎖作る
相続につながっていくもの
再生事業
+収益稼げる
リプランニング
リーシング安定 管理
さらにもう一つ
さらにお客様の視点でお困り事を解決するように
CBさん 25歳 入社3年目 管理部署所属
入社して数年、仕事を覚えて一生懸命やってきていましたが、視点は自分の部署だけにとどまっていたように感じます。「不動産コンサルティング勉強会」を通して、全体をイメージし、オーナー様の視点を知ることができました。当たり前のことなのですが会社全体について考えた時にいかに今まで機会損失をしてきたかを痛感しました。自分がオーナー様とお話しした時の会話が宝の山だったのですね。
当社は数多くの部署がありますが、全てはオーナー様の悩み解決のために発展してきました。“利他の精神”が当社の強みです。バックアップ体制がしっかりしている事を理解したので、オーナー様とお話しする時も自信を持って話せるようになりました。