連載「実践 事例で考える 学ぶ不動産コンサルティングの進め方(7)」 ~コンセプトマンションの建設により、9億円の節税と街づくりを実現~
福田 郁雄 株式会社福田財産コンサル
第7回 神奈川県川崎市のIさん
~コンセプトマンションの建設により、9億円の節税と街づくりを実現~
祖母から資産の管理を任され始めたIさん。土地3,300坪の相続税評価は約25億円、相続税は12億円と試算され、このままでは先祖伝来の土地が半分になってしまいます。そこで、その土地にコンセプトマンションを計画。約1万㎡を超える敷地が再開発され、緑豊かな植栽に囲まれたそのマンションが完成し、周辺地域の景色を一変させました。数々の問題点をクリアしながら、オーナーと共に創り上げた過程を紹介します。
依頼者は…
Iさん47歳。主婦兼不動産貸付業。
土地所有者の姪で、本家を守る立場にある。
現在は親と二世帯住宅に住む。配偶者有り、子供無し。
依頼前の資産内容は…
祖母が約3,300坪の敷地を川崎市内の駅近くに所有していました。敷地内には老朽化した家作、三軒の寮、祖母の自宅、依頼者の自宅が建ち、それ以外は畑と荒地でした。相続税評価は約25億円、相続税は約12億円と試算されました。
資産組み換え後の資産内容は…
依頼者名義の土地が約2,300坪。売却した土地は約700坪でした。敷地内には新築7階建て(約600坪)のコンセプトマンション、新築(約100坪)の店舗、新築の祖母の自宅、新築の姉の自宅、新築のアパート2棟、依頼者の自宅、二軒の寮が建っています。その外に約400坪の畑と駐車場が残っています。また、東京都内に新築の4階建て賃貸マンションを購入しました。
依頼者の要望は…
「祖母から資産管理を任せてもらえるようになったので、相続対策を総合的に提案してほしい。とりわけ相続税から先祖伝来の畑を守って欲しい。また、本家として代々受け継がれてきた格式みたいなものを残したい」という漠然としたものでした。
コンサルタントから見た課題は…
① 何も手を打たなければ相続税評価が約25億円、相続税が約12億円。つまり持っている土地が半分になってしまう。残したい畑はすべて失ってしまう。
② その場合12億円を支払うために土地を処分することになるが、マンション市況の良し悪しで土地が売れるかどうか決まってしまう立地である。市況の良い時機に相続が発生するか疑問だ。
③ 相続人が8人いる。しかも兄弟姉妹とその子供達である。法定相続するとなると分割は不可能で、最終的にはすべて処分して分ける方法しかない。
④ 土地を処分せず有効活用する場合には借金が必要だが、借金を相続人全員で引受けてもらえるとは思えない。資産と借金はセットで相続することが望ましい。
⑤ 広大な土地なので、全体の開発となると時間がかかる。相続までの時間が読めない。
⑥ 固定資産税の滞納が始まっているので、早急に納税原資を確保すると伴に安定収入を得なければ、固定資産税さえ払えない。
⑦ 自宅の周りの環境を維持しながらの開発が要求されている。また、名門の家に相応しい開発も期待されている。
⑧ 高齢の相続人の方々(おば)にも理解をしていただかなくてはならない。
⑨ 緑を残した街づくりを期待されているので、植栽計画が必要になる。
⑩ 占有者に明渡しを求めなければならない。
実際の展開は…
①自宅周辺以外の土地を処分、賃貸マンションとアパート2棟建築
固定資産税を支払うためにも、有効活用の頭金をつくるためにも、土地の処分から始めました。自宅周辺のまとまった土地は、残す土地と活用する土地とに分け、自宅から離れた土地を処分することにしました。
処分する方法は、住宅地としては良い条件であるので宅地分譲としました。300坪ほどの市街化区域内農地(2カ所)に道路を入れ、宅地開発してから売却しました。素地のままで売却すると建売会社に買い叩かれるので、自ら開発をして宅地にして売却しました。
宅地建物取引業法の規制にかからないようにする為にハウスメーカーとタイアップして分譲することにしました。そうすることで建売業者の低い買取価格ではなく、エンドユーザーの価格で売却できました。
②環境共生型で計画
新築のコンセプトマンションは最寄りの駅から徒歩9分という立地にあります。鹿児島から運んできたワシントン椰子をシンボルツリーとし、敷地全体を緑地で覆う植栽計画プランとしました。
前面は都市計画道路予定地のためセットバックを余儀なくされましたが、その部分をインターロッキング仕上げの緑道にすることによって近隣の人々に空間を提供することにしました。両サイドにはシャラやミモザなどが植え込まれています。最寄り駅への近道になるため、この緑道を利用する人々は多く、感謝されています。
賃貸マンションにはオーナー自らが経営するイタリアンレストランとベーカリーショップが併設されています。椰子や季節の花木を配し、南欧風の庭園がプランニングされています。落ち着いたジェラストーンとテラコッタを敷き詰めたテラスの中心には壁泉のオブジェを据え、そのまわりをオリーブやローズマリーで異国情緒を盛り上げています。
建築計画では施工床面積が3,277㎡、RC造で地上7階建て。間取りは30㎡の1K57戸と店舗2戸の他、60台の駐車場があります。オーナー自宅も新築されています。
入居者がホテルライフ的なリゾート感覚の暮らしができるようにランドスケープには特に苦心しました。また、24時間365日対応のインターネットが接続・通信費とも無料で利用できるようにしました。その他ホテル感覚のエントランスホールや奥行き1.8mのバルコニーなど入居者を納得させる仕様としました。
③オーナーの夢と誇り
オーナーは地元の名士で、かつては“人の敷地を踏まずとも駅まで歩いていける”と形容されていた程の大地主です。戦後の農地改革や数々の税金の支払いによって残った敷地は約1町で、戦前の20分の1になっていました。平成6年以降に実施された固定資産税の増税によって資産を維持するだけでも大変でした。「このままでは、相続税と固定資産税によって先祖代々築いてきた有形、無形の資産が無くなってしまう」との強い危機感から重い腰をあげました。「コトを起こすのであれば、夢を叶えるものとしたい」とのオーナーの希望を受け、コンセプト創りから始めました。オーナー関係者全員からヒヤリングして抽出された要望は以下のものでした。
①元々の緑をできるだけ残し、緑豊かな環境を残しつつもリゾートホテルのような上品な雰囲気を醸し出した建物としたい②依頼者が昔から憧れていたベーカリーショップを併設したい③地域のシンボルとなるような存在感のある建物にしたい。
その要望をかなえた結果、環境共生型賃貸マンションが生まれました。もちろん、相続税・所得税の節税やテナント誘致による収益性の向上、納税用地の駐車場としての暫定利用など資産設計として必要な対策案はすべて盛り込んであります。建物にはそのオーナーのコンセプトが明確にされていなければなりません。「オーナーの夢」と「ユーザーの憧れ」と「建築家の誇り」がベストマッチングして完成し、近隣住民にも高い評価を得て、街づくりの好事例となりました。
④不動産コンサルタントとして
不動産コンサルタントやFP(ファイナンシャルプランナー)は資産設計の総合コーディネーターです。最大の活躍の場は,計画を実行するにあたり発生する問題や課題の解決です。以下に本事例で発生した問題や課題とその解決策を紹介します。
ア.相続対策では、残す土地と保有を諦める土地と、活用する土地に分ける。
諦める土地は先行売却して評価を下げるための賃貸マンション建設の頭金に充当させなければならない。結果は相続税額が半分になり、残る土地は半分増えた。
イ.所得税対策としては、不動産管理会社とレストランの運営会社の二つを
設立し、所得移転と分散によりオーナーの所得課税を半減させた。
ウ.店舗の明渡し対策は、立ち退き専門の不動産業者と弁護士によって解決した。
エ.土地の確定については地積更正を行い面積確定後、固定資産税の更正によって税金の還付を受けた。
オ.土地の売却については、提携不動産業者を通じ「売れ払い方式」により希望価格での売却を実現。
カ.差別化のためには、プロのランドプランナーや照明プランナーを充て、街づくりに成功。
キ.オーナーの親族間のコミュニケーションづくりには、各種セレモニーや建物見学ツアーを実施。
ク.近隣対策は最初から街づくりをアピールすることにより近隣の同意を取り付けた。
ケ.複数の相続人の了承に対しては、財産分与を予定した公正証書を作成した。
コ.資金繰りについては、店舗運営の資金も含め、地元金融機関から最優遇金利での調達を行った。
⑤専門家のコーディネート
これら数多い問題や課題解決はコーディネーター自ら行うものもあるが、大半は専門家に依頼、業務を代行してもらいました。幸い本案件は依頼者が自ら積極的に動いて解決してくれたので大変恵まれました。もっとも、本来コーディネーターはあくまでも支援者であって、オーナーへの適切な情報提供が仕事です。最終決定はオーナーの仕事です。
本事例はオーナーとコーディネーター・設計事務所およびゼネコン・税理士・弁護士・土地家屋調査士・司法書士・銀行・不動産業者・ランドプランナー・照明プランナー・賃貸管理会社・店舗設計士などがコンセプトを共有しコラボレーションすることによって創り上げることができました。
⑥遺言書の薦め
これだけの開発を行うと当然、大きな借金を抱えることになります。消極財産の相続は揉める要因にもなるので、遺言書を作っておくほうが安心です。本件では兄弟姉妹の相続になるので後継者問題もからみ揉めがちなケースでした。
そこで、公証役場に行って公正証書遺言を作ることにしました。実は一度遺言書は作ってありましたが、「兄弟姉妹3人に相続する」というような曖昧なものでした。顧問弁護士を通して作成した新しい遺言書では、大半の資産を姪の依頼者に遺贈するという内容にしました。
⑦姪に遺贈して相続飛ばし
それだと兄弟姉妹の相続分が無くなってしまうわけですが、兄弟姉妹も高齢者で、いずれ近いうちに相続が発生するとも限りません。一人の姪へ大半を遺贈するということは相続税の2割加算となりますが、それでも2回の相続よりは節税になります。2割加算を避けるために、姪を養子縁組するということも考えましたが、法定相続人8人全員への説明も大変です。
相続人が1人になると相続税の基礎控除が減り、一旦法定相続で計算する日本の相続税の計算では相続人が多ければ多いほど税金が少なくなる仕組みになっていますが、結果的には2割加算されても1回の相続で済む遺贈のほうが有利であると判断しました。
ただ、通常は遺留分の問題が発生します。法定相続人は遺言書の内容にかかわらず一定の割合で相続する権利を主張することができるからです。ところが、兄弟姉妹の相続ではこの遺留分が適用されないということもあり、養子縁組ではなく遺贈を選択しても問題はありませんでした。
⑧収益対策としてのアパート建築
コンセプトマンションの建築によって、約12億円の相続税が約6億円に下がりました。節税目的は達成しましたが、収益力に乏しい点が問題でした。
1Kの高級賃貸マンションは建設費が一戸1,000万円、普通のアパートの場合でも一戸500万円くらいかかります。一戸1,000万で家賃が8~9万円。アパートなら一戸500万円で6~7万円です。当然アパートのほうが投資価格は少なくて、利回りが高くなります。
そこで次に、収益対策としてアパートを2カ所、150坪の敷地に建てました。一つは木質3階建ての共同住宅、もう一つは木質2階建てアパートにしました。地型や道路付けなどを考慮して、最も効率良い建物を建てました。
建築費を年間の家賃総額で割ると14%の高利回りなので、まあまあの収益性となりました。この2棟のアパート建築によって収益力が増したのはもちろん、相続税のシミュレーションが約3億円になりました。当初から比べると約9億円の節税です。この間に土地価格が下がり路線価が下がったことも大きく税金が下がった理由でした。
⑨攻めの相続対策、投資用マンションを購入
資産管理を任されたIさんは、さらなる攻めの相続対策を考えました。すでに自用地は畑以外すべて建物が建っています。そこで、土地の担保力を活かし、別件担保を提供し、ほぼ全額ローンで投資用マンションを購入することにしました。
今は金利も安く、都内に利回りの良い手ごろな新築の賃貸マンションが見つかったので購入しました。毎月約100万円の収入になります。毎月のローンの返済が約70万円。維持管理費が約15万円なので、差し引き毎月15万円残るという収支です。節税額は約5,000万円になります。あまり儲けの多い投資ではないですが、新築で東京都内に資産を持つことができ、節税になります。将来的には売却することも出来ます。
⑩先行して土地を売却して相続税の納税資金を確保する手もある
次なる対策は相続税の納税対策です。通常は相続が発生して、遺産分割協議書を作成してから土地を売却します。しかしその場合、時間がかかるうえ、良いタイミングでなければマンション用地として高く売却することはできません。時間切れでマンションディベロッパーに安く買い叩かれる恐れもあります。
そこで、前もって400坪の敷地を測量してから分筆し、駐車場の借主に明渡しをしてもらうなどの準備を始めました。駐車場の売却資金の半分は相続税の納税資金とし、一部は不動産投資の頭金とし、一部はコンセプトマンションの大規模修繕費に取っておこうと考えました。
⑪祖母の相続発生
先行して相続税の納税用用地を売却しようと準備していたところに、祖母が亡くなりました。大往生でした。
遺言書の執行やら、相続税納税の準備やら目まぐるしい日々が続きました。幸い遺言書があったために表立った問題はおこりませんでしたが、農地転用手続きや不動産の名義変更、借金の免責的債務の引き受けなどすべきことは沢山ありました。
納税できるほどの現金がないので、約400坪の土地を売却することにしました。幸い売却の準備をしていたので、すみやかにマンションディベロッパーに希望価格で売却することができました。環境に配慮しながら街づくりをしてきたので、購入するマンションディベロッパーにも同じようなコンセプトで開発してもらうことを約束し、土地の売買契約書の特約に盛り込んでもらいました。
⑫結果
相続税の試算は約12億円から2億円弱までに引き下げることができました。そのため売却する土地は約400坪で済み、大切な畑は十分に残すことができました。相続税を支払い、譲渡税を支払ったとしても手元に現金が残ります。有効活用や不動産投資で増えた借金はなるべく早く返済したいので、「内入れ返済」することも検討中です。トータル9年という歳月を要しましたが、初期の目的は十分達成することができました。
依頼者の感想
以下にIさんの感想を付け加えておきます。依頼者の視点が見えてきます。
まずは相続対策
今から思うと、コンセプトマンションに少しお金をかけすぎたのかなと思います。相続対策が一番の急務だったので、借金をしなければと思ったわけです。かなり広い土地を貸家建て付け地にして、上にも建物を積み重ねないと駄目かなあと思いました。
もうひとつの大きな目的は畑を残すことでした。やはり、(親族の)お年寄り達は畑が大好きで、というよりも畑がないとここにいる意味がないのです。相続対策と畑を残すこと、その2つが目的でした。母には、先祖代々から引き継いできたここの土地を守らなければと聞かされていました。無意識のうちにも昔からの木はいっぱい残しておきたいという気持ちがありました。
資産管理に力を入れています
資産管理に最も力を入れています。現状はかなり低い借り入れ利率になっていますが、将来上がることも想定しておかなければなりません。ですから空室率が上がることは避けなければなりません。そこで、結構修繕費の投資もしています。
浴室乾燥機を全室に入れました。ダミーだった防犯カメラも全部本物に変えました。人目につきやすい扉の横のボックスなどはもう塗り替えています。常に新品に見えるようにしておこうと思います。
生前に売却の準備をしておいて良かった
「これからマンションはますます都心志向が強まる」という福田さんの薦めが効きました。神奈川県内では不安という思いが募り思い切って都内にも賃貸マンションを購入しました。それから組み換えにはタイミング重要だということも痛感しました。
指南役に恵まれました
我々が幸運だったのは、良いコンサルタントに恵まれたことです。ほかの士業の人達や専門家の人達のマネジメントも出来なかったわけですから。
結局、素人では自分たちが進むべき方向性というのは見えないと思いますね。対症療法的な対応はできても、中長期の対処は難しい。私達の立場から総合的にアドバイスしてくれる専門家が必要なのです。
■ コンサルのポイント その19 依頼者の目線で話す
仕事の決定率を上げるには、依頼者の目線に自分の目線を合わせる事です。例えば、男性には「利回りの相場は○○です」、女性には「毎月、手取りで○○の収入になります」と言うと伝わりやすいです。高齢者には「この提案は世の中の人に喜んでもらえます」、若年者には「この提案はやりがいがありますよ」。経営者には「御社のビジョンやコミットメントに合致すると思います」、従業員には「この資料なら決済が下り易く、リスクも少ないでしょう」がいいでしょう。
人は千差万別、過去の経験や思考方法も多種多様です。可能な限り相手の頭の中にある思考方法に近づいて、相手の言葉で語ります。そもそも人は他人に説得されるのが嫌いです。自分で納得して決めたいのです。コンサルタントが依頼者の言葉で話をすれば、依頼者は自分で納得しやすいのです。
私はお客様が最大の先生だと思っています。特にモノの見方や考え方などについて色々教えてくれました。私はそれぞれの人の価値観にあった資産運用がベストであると思っているので、人の価値観を知ることが何よりも大切だと考えています。
■ コンサルのポイント その20 土地家屋調査士の力
コンサルティングの履行にあたり、プロジェクト進行の成否を分けるのは意外にも土地家屋調査士の選定です。土地の売却、土地の活用、土地の分割など全てのプロジェクトのスタートは土地の測量から始まります。
土地の境界争いというのは、ほとんどの現場であると言ってもよい位です。地価の高い所では、1㎝違っただけでも何百万円も土地の値段が変わってしまう事があるので当事者は必死です。それらをまとめる調査士には高度な仲裁能力が求められます。客観的な資料(①専有状況②公募面積・両地の面積比率③古図・土地台帳付図④分筆図⑤境界木・境界石⑥地形等)を集め、当事者双方の話を良く傾聴した上で境界を決定しきれる能力です。
また相続税の評価をする時には、土地の登記とは別に利用形態別に区切って相続税の評価をするので、相続税の申告の際に不利にならないように測量をしてくれる調査士がいると心強いです。例えば道路のセットバック・都市計画道路・貸家建付地の範囲の特定などです。技術・知識・資格だけではなく、+αの事が分かっている土地家屋調査士にお願いすると仕事はスムーズに進みます。
■ コンサルのポイント その21 ポートフォリオに着目
リートのアセットマネージャーはそれぞれ商業系・住宅系・物流系・総合系と不動産投資分野に特徴を持ちながら、多数の投資用不動産を分散して運用しています。地域を変えて持つことによってリスク分散を図りながらリターンを確保しています。良い物件を増やしていき、不要なものは売却してポートフォリオの中身を改善して価値を高め、投資家に少しでも多くの分配金を配当するように努力しています。個人の不動産中心の資産家もこのようなポートフォリオの考えを取り入れなくてはいけません。
不動産を地域や種類を分散して持ちリスク分散します。低利用・未利用・低収益・換金性が悪い不良資産は、優良資産に組み換えていきます。または、不良資産を売却した資金を借金の返済に充てて、借入金比率を下げることも必要かも知れません。いつでも換金出来るように測量・宅地開発を行い、売却しやすいようにしておくことも重要です。
このような課題発見がコンサルタントの役割です。課題に気づかせ実際に優良資産へ組み換え、資産全体のコーディネートをしていくところに腕の見せ所があります。不動産も金融商品と見なすようになってきていて、ますますポートフォリオを意識した資産組み換えの重要性は高まっていくでしょう。
*『混迷の不動産市場を乗り切る優良資産への組み換え術』(住宅新報社)に収録した事例を基に再構成しています。