収益不動産が節税対策になる理由
(1)時価と相続税評価額の乖離に着目
相続税の申告は本来、相続税法上、時価で申告をすることになっていますが、時価が不明瞭のため、便宜上、財産評価通達(路線価等)で計算して、申告を行なっています。当然、時価と相続税評価に乖離が生まれます。時価より相続税評価が低くなれば節税となり、逆に時価より相続税評価額が高くなれば増税になります。
時価より相続税評価額が高い資産は、即刻売却することになります。例えば、無道路地、別荘、崖地、借地権などはその代表的なものです。逆に、時価より相続税評価額が低い資産は、完成宅地、家屋、借家です。
完成宅地は時価の約80%、家屋は固定資産評価額となるので時価の約60%、借家は借家権がマイナスされるので、時価の約40%程度になります。この時価と相続税評価額の差が節税の原資となるのです。
路線価の高い地域の方が低い地域より時価と相続税評価の乖離が大きいので、同じ土地を持つのであるのならば、都会が有利ということになります。
(2)時価は収益還元法、相続税評価は更地主義
収益不動産の時価は主に収益還元法によって、査定されます。年間に入る家賃収入から管理費や固定資産税などの経費を除いた、ネットの利益が購入価格に対して、どのくらいの利回りになるかを判断して取引がされます。金融商品と同じく、期待利回りが価格を決める要素となります。国債の利回りに、不動産特有のリスクを加えた利回りが期待利回りとなります。仮に期待利回りが、5%として、年間のネット利益が500万円とすれば、500万円÷5%=1億円が収益還元価格となります。
一方、相続税評価はあくまで土地いくら、建物いくらで計算されます。土地は路線価(時価の約50~80%※地域により異なる)、建物は市町村の評価する固定資産税評価(時価の約40~60%※地域により異なる)を時価と見なします。
さらに、土地については借家が建っていれば、貸家建て付け地として18~21%(住宅地)の評価減となります、建物については、借家権がつくので30%の評価減となります。
収益不動産については、収益還元価格による時価が1億円としても、相続税評価が3,000万円ということになってしまうのです。
これは、当局の更地至上主義の考えを逆手にとった節税策といえます。当局は借家人がいると借家権が発生し、解体して更地にするためには、明渡し費用がかかるので、30%安くしましょうというものです。また、貸家が建っている敷地は、明渡し費用と解体費用がかかるので約20%引きにしましょうということです。
入居者がいれば、家賃が入るので価値が高いと考えるのが、市場価格で、入居者がいれば明渡し費用と解体費がかかるから値引きしましょうというのが当局の考えです。収益不動産の命は収益にもかかわらず、未だにおかしな解釈となっている訳です。これは、収益還元価格の期待利回りの曖昧さがあるので、分かっていても変更できないのが原因です。
(3)将来の収益には相続税はかからない
相続直前に収益不動産を取得したとします。時価で3億円です。相続税評価額が1億円とします。2億円の評価減となります。税率が50%ならば1億円の節税となります。さらに将来の収益に対しては相続税がかからないのです。時価3億円で、ネット利回りが7%としましょう。年間の税引き前の手取りは、3億円×7%=2,100万円です。20年間であれば、4.2億円の収入になります。この将来の収入に対して相続税をかけることはありません。収益不動産の相続税上の優位性は別格です。