1. 相続対策不変の三原則
(1)分割 揉めないように分ける
相続が発生すると、まず行なうのが相続人の確定と財産の把握です。そして、遺産分割協議書をつくるわけですが、分けにくい資産ばかりですと、揉めやすくなります。例えば、資産が自宅のみ、借金がたっぷりついた不動産、開発されていない広大な土地などです。いざ、相続が起きた時のために、分けやすくしておくことと、誰に何を相続するのか想定しておくことが大切です。
そこで、あらかじめ相続が起きたことを前提に遺産分割協議書を作っておくのです。それを公証役場に持っていき、公正証書にすればりっぱな遺言となります。特定の人にまとめて相続や遺贈する場合は、付言でその理由や気持ちをきちんと伝えておきます。
細かいことを言えば、使わなくなった車を処分しておく、沢山ある口座を一本化しておく、保証債務を解消しておく、など財産をシンプルにしておくと揉めにくくなります。
生前贈与も分割対策の一つです。子育てや教育費に負担のかかる時期に贈与を受けるとありがたいものです。生き金となり感謝されます。前もって自分の意思で贈与を行なうことも分割対策の一つです。
(2)納税 期日までに納税する
相続税の納税まで10ヶ月しか期間がありません。すんなり遺産分割協議書が締結でき、納付に十分な現金があれば、全く問題がありません。ところが、資産家の多くは不動産はあるのにお金がないというケースが多いのです。
その場合、不動産を売却して現金化しなくてはなりませんが、遺産分割の協議が進まない。売却する土地の境界で揉め、確定測量ができないため、売却が進まない。売却する土地の開発許可が下りないので、契約はしたものの、決済できない。といった事例が頻繁に見られます。
最も基本的な納税対策は、資産の運用で収益を得、現金を残しておくことです。それが追いつかない場合は、納税用に売却する不動産の境界確定や老朽アパートであればリフォームして売却しやすくしておく、などの不動産の商品化(すぐ売れる状態にしておくこと)が大切です。納税ギリギリになって、商品化されていない不動産をたたき売ることは、絶対に避けなければなりません。売り急ぎ、狼狽売りが最も不動産の価値を下げる行為だからです。中には、相続前に先行して、不動産を売却して納税資金を確保することもあります。多少、増税になったとしても、狼狽売りで資産価値を減らすより有利だと判断するからです。
(3)節税 相続税評価を下げる
節税は1章でも説明したとおり相続税評価を下げることです。ここで大切なことは、評価だけ下げるのであって、資産の価値を下げるのではないということです。よくある間違いで多いのは、遊休地に賃貸マンションを建てるという行為です。業者から相続対策になるというので、良く考えずに賃貸マンションを建ててしまって、後から資産価値が減ってしまったことを後悔するのです。
1億円の土地がありました。そこに2億円の建築費で賃貸マンションを建てました。ローンも2億円です。相続税を払うために売却しようと思ったら、2億円でしか売れません。ローンを返済したら何も残りません。1億円の土地を失ってしまったのです。賃貸マンションを建て、土地の資産価値をゼロにしてしまったのです。
賢い資産家は、ローコストのアパートを複数建て、アパートごと売却してローンを返済した後に、1億円以上残すこともできます。逆に、土地活用によって資産価値を上げたのです。評価は下げて、資産価値は上げる。これが相続対策の大切なポイントです。